伊万里市波多津町煤尾(名前・年齢不詳)男性二名

 あの、勘右衛門どんの佐志(唐津市)にきば行きよらしたら、

良か家の建っちょったて。

「ありゃあ、ぎゃん家ない、家(うち)ん家は

胡麻ん皮で引いちょっとの、もっと太か、

あぎゃんとば引いち」ち、話ばさしたらしかです。

そうしたところが、大工(じゃく)さんたちの、

また、そこん辺(にき)の人たちの、

「そやん、五万瓦で引いた家のなりゃ、相当勘右衛門どん方、

太か家じゃろう」ち言(い)うて、見や来(こ)やしたげな。

そうしたところが、来てみらしたら、入り口もなかないもなか、

もうほんな飯炊(ち)ゃあて食う家だけじゃったらしい。

「勘右衛門どんは、ぎゃん嘘(うっさ)ごと言わすじゃろうか」

て、勘右衛門どんに言わす。

「見てんさい。家(うち)んたあ胡麻の皮で引いちょろうが」ち。

あの、食われる胡麻。

そぎゃん話。

(出典 未発刊)

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