伊万里市波多津町煤尾(名前・年齢不詳)男性一名

 あの、このへん一体は大体、唐津郷で唐津の

裏町の勘右衛門さんちゅう

頓知の良かおじさんがおったそうですもんねぇ。

そして、痩せーた馬ば一匹飼(こ)うとったもよう。

そして、金持ちたんのところへ行って、

馬の尻にお金をたくさん詰め込うで、そして、

「こりゃあ、馬ば持っちょっとん、お前(まい)、売ろうか」ち、

金持ちたんに言わしたもよう。ところが、

「こぎゃん痩せた馬、俺(おり)ゃ買わーん」ち、

こう金持ちたんが言われたそうですたい。そしたら、

「いんにゃあ、こりゃあ金糞たるるばん」ち。

「うーん。金糞たるっ」

そうしたところが、あんたあ、馬は尻ばポーンと開けて、

ポロポロポロポロ、そのたれたそうですたい。

そうしたところが、こうしてあてってみたところが、

「ありゃ、ほんなこてこりゃあ、えぇ、金ば、金糞たるんねぇ。

幾ら、そんない」

「幾々らねぇ」

「そりゃあ、高(たっ)かじゃあ」

「いんにゃ、金んかかっとっけん、高かない譲らんばい」

「いんにゃ。金持っちょたい。俺(おい)が買おうだい」ち言うたあ。

今度(こんだ)あ、買わしたもよう。

そうしたところが、そのかわり一時(いっとき)してから、

また開けてみらしたところが、

一つもお金が入っとらんそうですたい。

勘右衛門からまたやられた。

「こりゃあ、金じゃあたれんじゃあ」て、

勘右衛門に言わしたもよう。

そうしたところが、

「お前(まい)、何(なん)ば食わせよっかい」ち。

「大抵美味(うま)か物(もん)が食わせたい。

金糞よんにゅうたりゅうごたったもん」

て、言わしたところが、

「そりゃつまらん。金ば食わせにゃあ」て、言うたそうですたい。

(出典 未発刊)

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