伊万里市波多津町煤尾(名前・年齢不詳)男性一名

 ある時、勘右衛門さんの寒か時分に、

鏡の叔母さん方に行かしたちゅうもん。そうしたら、

「あれん、久しぶり来たけん、白飯ば炊いちぇ食わしゅうで」

ち言(ゅ)うて、あの、白飯ば炊(ち)ゃあち歯釜からそうけに、

あん、おちりましたりゃ、もう年も取っとらすもんじゃから、

鼻汁ば白飯の中(なき)ゃあスターと落(うっ)ちゃやかしたそうな。

そして、勘右衛門どんの横に腰掛とって、回したちゅうたん。

まあ、胸ん方の悪うなって、

「何(なん)じゃる用のでけたけん」ち言うて、

ホッとそん時ゃ戻らしたそうな。

そいからまた、一時(いっとき)しよったら鏡の初午さまで、

叔母さん方また勘右衛門どんの行かしたら、

美味(うま)か美味か甘酒ば造って飲ませらしたて。

「こりゃあ、お前(まい)の甘酒は美味かなあ」ち、大抵褒めて。

褒めらしたらまた、

「まあ一杯(いっぴゃ)あ飲め。まあ一杯あ飲め」て、

腹いっぴゃあご馳走(っそう)さしたそうな。

そうしたところが、余(あんま)い褒めらるっし、

「こりゃあ、どがんして造ったかい」ち言(い)うち、

叔母さんに聞かしたら、

「そりゃあ、あげんとこん頃来た時分に、

白飯ば炊いちぇ食わしゅうで思うとったいどん、

わがコックリ戻るもんじゃるけん、あの、

そいで麹(こうじ)ば造って甘酒ば造ったたい」て言わしたそうな。

そりからまた、胸の悪うなって、

そして前ん川(かや)あ行たち口ば注(そそ)ぎよらしたそうな。

そうしたところが、口ば注いでチョイと頭ば上げてみらしたら、

あの、その上で汚れた肥たごば洗(あり)いよらしたそうな。

そいで二度(にんど)も三度も臭い目に合わしたそうな。

そいばっきゃ。【それでおしまい】

(出典 未発刊)

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