立花町渚 松尾テイさん(大5生)
あの、田舎では、
「牛食(は)みい切いぎゃあ、馬食み切いぎゃあ」ち言(ゅ)うて、
草、朝から、草切いぎゃあ行(い)くですねぇ。
そいから夕方、畑の仕事一段落してから、草ば切いぎゃあ。
(朝の一回じゃ足らんけんなた。夕方も行く。)
そいぎんと、丁度、隣(とない)のおハナちゃんと、隣の政ちゃんと、
偶然、草ば切らす時分に、原っぱに行たとらす。
丁度そこに、一本太か木のあったちゅうばってん。
(その辺な全部(しっきゃ)あ、村中で、その、切いぎゃ行たてよか所(とこ)じゃったて。)
偶然、その日は、そのおハナちゃんと政やんだけやったて。
そいぎぃ、夕立ちのきて、雷(かみない)さんの恐(おっそ)ろしゅうゴロゴロ、ピカピカ鳴らすもんじゃっけん、
「木の下(しち)ゃおろう」ち言(ゅ)うて、二(ふ)人(ちゃい)共(どめ)逃げ込ましたて。
そうしたところが、丁度そこん所(とこ)に鳴いよった雷さんの落ちさした所(とこれ)ぇ、かっかえたて。そいぎぃ、
「何(ない)じゃろうかあ」て、恐る恐るしよって見よったぎぃ、
横に、その、ご馳走の何(ない)じゃい入っとったて。
「あらー、こら、雷さんの弁当ばしやったろうかあ」ちて。
そいぎぃ、いちばん上ンとに田螺の佃煮の余(よん)計(にゅ)う入っとったて。
(ほんなことは雷さんじゃっけん、そいぎその、佃煮ですよね。)
そいでも、こうして見よんさったぎぃ、田螺ンごとしとっ。
そいぎぃ、田螺の佃煮の入っとったて。そいぎぃ、
「あらー、田螺の佃煮の余(よん)計(にゅ)う入っとっ」て。
「下ンとにゃ、何の入っとろうかあ」て、下ば見ろうでさしたぎぃ、おハナちゃんが、
「いやー」ちて、言わしたて。
「恥ずかしい」て。
(出典 肥前伊万里の昔話と伝説)