伊万里市立花町渚 松尾テイさん(大5生)

 雨ン降ごたっ日に、

ようギャアギャアギャアギャア鳴く、

蛙―のおんもんなたあ。

あれをその、仏蛙―の鳴きよっちゅうわけで。

そいがね、あの、むかしむかし。

ほんにその、言うこと聞かん、その蛙―がおったて。

そいぎあの、お父さん蛙―とお母さん蛙―がおって、

「今日(きゅう)は、この田ン中ば百姓さんの駄抜きゃあぎゃ来らすけん、

牛のあがんとに踏んだくられんごと。

鍬ン先当たらんごと、今日はもう、畦ン方に上がって、

百姓さんの邪魔(じゃみゃ)ならんごとしとらんば」

て、言いいんさった。

そいでもその、いっちょん言うこと聞かじぃ、

お母さんとお父さんと、山と言わすっぎぃ、

「川、川」て、言わすぎぃ、山ゃあばっかい、その、

行くごとの反対ばっかいすっ蛙―のおったて。

子蛙―がおって。いっちょん聞かんちゅうもん。そいでも、

「今日、どがんこってんお前達(まいたち)ゃ畦(あぜ)上がっとらんばでけんばい」

て、言んさった時、百姓さんの来て、駄使ゃあさすぎぃ、それぇとごえて、

もう、ほんな牛の鼻先行たて、ピョンと逃げたい、

鋤ン先行たて、逃けたいして、もうお父さん蛙―、お母さん蛙―が、

はらはらさせよっち。

そいぎぃ、余い心配あば気になって、その、とうとう病気さしたて。

あの、病気して。そいで、とうとう死なしたちゅうもん。

そいぎぃ、死ぬ間際になって、こいしこおどんが言うても、

反対ばっかいすっけん、もう当たり前言うて聞かんけん、て言うて。

ほんなことは、山ン方に埋けてもらいたかったろうどん、

山ン方にて言うぎぃ、川ン方に埋きゅうごたっけん。

「あの、川ン方に埋めてくいろう」て、言わしたて。

親が言いいおかしたて。

そうしたら、直もう、ほんに今まじゃ、親の死んで初めて、

「親に世話かけよったにゃあ、ち言うことのわかっ。

今度(こんだ)あ、最後じゃもん。

親の言わしたごと、川ン方に埋(う)むうだい」ち言うて。

ほんなこと、親蛙―はその、山ン方に埋けてもらいたかったどん、

川ン方にと言うとば聞いて、川ン方に埋めらいたて。

そうしたぎ今度あ、もう雨ン降ろうごたっぎぃ、

「親の墓のきゃあ流るっごたっ」ち言うて、あぎゃん、

「ギャアギャアギャアギャア」と鳴くとて。

そいからが、もう反対ばっかいすっとば、

仏蛙―のごたって、言うごとなったとばい。

そいけん、素直に親の死ぬまで世話かけじぃ、素直に、

「はい」ちて、聞かんばてね。

こいでおしまい、チャンチャン。

(肥前伊万里の昔話と伝説 P67)

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