伊万里市立花町渚 松尾テイさん(大5生)
あの、狐がね、田螺を馬鹿にして、
「お前、とてもそがんしてもざもざしとってしんもんか」て、
軽蔑して侮って、言うわけでしょ。
そいぎぃ、
「そんなら、あの、競争してみゅうだいのう」て。
「どっちが勝つじゃろう」ち言うごと、あいすっですね。
そして、あの、田螺は狐の尻尾に、ちょっと挟み付いて。
そして行たて。ひょっと先、一足先。下りるわけ。そして
「あら、狐さん。今やあ」て。
「俺ゃまあ、早うから来とったけぇ」て。
そいぎぃ、どうーも狐は、おかしかもんじゃいけん。そいぎぃ、
「まいっちょ」ちて。
そおいぎぃ、そん時また、尻尾に挟み付いて行たて。
向こう側でまた、ポトッとすっでしょ。
そして、とうとう狐に勝つことね。
結局、狐は利巧ふいして、あいすっとばってん、
田螺は知恵でね、あいしたていうとこでしょうね。
(肥前伊万里の昔話と伝説 P48)