伊万里市立花町渚 松尾テイさん（大5生）
伊万里読み聞かせボランティア 田中亮子さん
むかーしむかし。
亀が地面をゴソゴソ這っていました。
丁度その時、鶴が空ば飛んでいました。
「鶴はよかにゃあ。そがんして飛うで、何処さんでん方々行たて、
見物して歩いて。俺ゃあ、じぃっとモザーモザーして、
もう何処ぇも見物にも行きゃあえじぃ、鶴が羨ましかにゃあ。
俺もあぎゃんして飛うだこんなあ、楽しか、面白かろうに」と、
寝て見ながら言ったところ、その日、それを鶴が聞いて、
「そがん、俺が羨ましかないば、空ば連れて行こうか」と、鶴が言ったので
「そがんしてくいなさい。私も一遍な空ば飛うでみたかあ」と亀が答えました。
鶴は、そこで、その辺にあった棒切れを持ってきて、
「お前、ここばくわえとんさいよ。絶対、飛びよっ時、もの言うぎでけんばい」
「俺がこっちをくわえて連れて行くけん」と言った。
「もう、絶対ものば言わん。そいぎぃ、連れて行たてくんさい」と亀は言いました。
「今度（こんだ）あ、飛ぶばい。よかのう、ものは言うぎできんばい」と、何遍でも鶴から念押されて、
「うぅん。もなあ言わん」と、約束して。一・二・三で飛び上がった。
そして、ずうーっと飛んで、ひょっと下の村を見たら、村の子供が、
「わあ、見てんのう。空ば見てんのう。亀が鶴から攫われていきよっぱん」と言って、
下にいるワンパク坊主達が、ヤアーヤアー言うものだから、亀がつい、
「攫（さら）われていきよっとじゃなかとぞー」と、言ったので、ストーンと落ちて、そのままだった。
だから、いらないことは言ってはいけないんですよ。
ちゃんと、言ってはいけない時と、言ってよい時を心得ていないといけないということ。
はい、これでおしまい、チャンチャン。
（肥前伊万里の昔話と伝説 P71）
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