伊万里市立花町渚 松尾テイさん(大5生)

ただ、野狐の化けて、大根ば全部あおっ盗ったぃないたいすっとを、

またほかの猿が真似て、いうことは結局、猿が物真似して、

失敗すっちゅうことどま聞いとったですね。

あのね、猿と野狐と、その、お互いにご馳走するというわけですねぇ。

寒か冬ちゃっけんね。そうしたら、猿が先すっとでしょう。

狐がずるかもんじゃっけん、猿に先ご馳走になっとって、自分がしまえん時ゃあもう、

「今日は差しつかえたけんされんけん、ちょっと待っといてくいなさい」て、

日延べすっ。そいぎ猿は、今夜よかろうと思うて、

「狐どん、どがんじゃろうか」ち言うぎぃ、

「今日は、どうじゃいけん」ち、言うてその、ご馳走せんですね。

我がばっかいご馳走なって。

そいぎぃ、遅うにゃ猿が、歯痒うなって、あの、またみせぶらかしぃ、

町から持って来よらす車力、魚屋さんが乗せて持って来よらすとば、

一匹おっ盗っとって来て、そのご馳走ば見せぶらきゃあて食うわけでしょ。そいぎ狐が、

「そら、どがんしたかい」ち言うぎぃ、

「こぎゃん、こぎゃん。あの、あつけぇ、長屋の所ぇ死んだふいしてしとったぎにゃ、

『死んどったあ』ち言うて、俺が拾うて車力乗せたけんが、

そいばようらと持ってはって来たくせぇ。こがん容易(たやす)かごたなか」て。そいぎぃ。

「俺もいっちょ」ちて、今度狐が真似たわけですよね。

そうして、ほんな前、猿からそがんされとんもんじゃっけん、

そうそう馬車引きさんも騙されじぃ、今度あ、狐が猿のよか目ばみろうでさしたいどんが、

あの、かえって殺されて、あの、猿はもう、敵打ちのできたていうようなことをね。

そがん話は聞いたごたっですけど。

結局やっぱい、あの、そのあとにいつでもお婆ちゃんが言わすことにゃ、

何でも人を騙すぎぃ。我が身に返ってくっとやっけんが、

余い人をきゃあ騙ゃあたいないたいすっぎでけんばいて、

その、教えらすとですもんね。

(肥前伊万里の昔話と伝説 P38)

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