伊万里市立花町渚 松尾テイさん(大5生)

 触(さる)れて歩(さる)こうでちゃ、使(つき)ゃあ人があるわけ。

そいぎんとね、あの、いちばん口に蚤(のみ)に、

「お前(まい)がピーンピーン、高(たこ)う我が身似やわじ跳ぶけん、

使ゃあに触れて歩(さる)けぇ」ちて、言いござったぎぃ、

「はい。跳ぶたあ私も、我が身に似やわじ跳ぶけんよかいどん、

一(ひと)跳びすったんびにクルクルっと廻って、

三度(さんべん)、お辞儀ばしよっぎ遅(おす)うにゃ方角間違うて、

何処さい行くじゃいわからんけん、その役は私ゃご免してくいござい」て言うたて。

そしたぎぃ、

「うぅん、そうにゃあ【そうか】。

そがん言うぎぃ、ほんなこて、クルクルっと廻いよんもんにゃあ」て。

「さて、今度何(なに)しゅうか。

何(ない)が良かろう、かいが良かろう」て言いよっても。

「あの、百足(むかぜ)は良かばい。

ありゃ、足ば余計(よんにゅ)う持っとっけん、行く時早かぜぇ」て言うて、

その百足に、

「触れて歩(さる)け」ちて、世話人さんが行かしたぎぃ、

「はい。そりゃ、行くともよろしゅうござんすっぱい。

今のうからそいしこ廻ろうでちゃ、藁鞋(わらじ)ば百足作いよっぎぃ、

とても急に間に合うみゃあごたっけん、他ン者にしてくいなさい」て、

言うて百足は断ったて。

そいからが、ありゃあ、「百足」と書いて、

<むかぜ>て、読むごとになったとばい。

はい、おしまい。

(肥前伊万里の昔話と伝説 P65)

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