伊万里市南波多町府招下 横田 栄さん(年齢不詳)
鏡山の麓(ふもと)に観音様がおられる。
そこの神主さんのところには、昔から伝わる巻物があった。
その巻物を盗まれてはいけないと神主さんが思って、
たくさんの狐(きつね)に番をさせていた。
そして、神主さんは、いつも出歩いていたと。
ある日、そのことを知っている勘右衛門は、
狐を騙して巻物を取り上げようと思い、知恵を絞った。
そして、油揚げを用意して観音さんの所に行き、そこに置いていた。
狐は寝ずに巻物の番をしていた。
勘右衛門は狐に.
「お前たちの一番好いた物ば持って来ちょっとん、食べんか?」と言った。狐は、
「好いた物なら食ぶっ」と、勘右衛門に言った。
すると、勘右衛門は、
「油揚げ持って来とっとん、お前たちが食べるかわからんけん、
ここまでは持って来とらん。観音さんの所に置いとっ」と言った。狐は、
「そんなら食べに行こう」と言って、みんな出て行ったと。
その間に勘右衛門は巻物を盗んで、家に持って帰ったと。
それで、今でも勘右衛門の家に巻物があると言うことさ。
(出典 佐賀の民話1集 P260)