伊万里市南波多町重橋 畠山勝義さん(年齢不詳)

   むかし、むかし。

あるところにいつまでも嫁をもらわない男が住んでいた。

ある日、その男のところにきれいな女が訪ねて来て、

「私をあなたの嫁にして下さい」と頼んだ。

「いや、自分は嫁はもらわん」と、その男は言った。

「なしですか?」と女は聞いたので、

「もうとにかく、飯は減るしね、金はつかうし。だから、私は独身が良い」と男は言った。

すると、女は、

「いいえ、私はご飯は全然食べません」と言った。

「そんなら良かったい」と、男は、その女を嫁にした。

嫁は一所懸命になって、飯も食わずに毎日働いていた。

ある日、男は用事があって、他所(よそ)へ出かけて行った。

そして、何とはなしに自分の家に帰って来て、台所をのぞいた。

すると、嫁さんは蜘蛛になって、自分の背中に握り飯を作って放り込んでいた。

男は蜘蛛を嫁にしていたかと、びっくりした。

男は、そのことを知らぬふりをして、

「今、帰った」と、声をかけた。

嫁は正体を見破られたことに気付いて、

「あ、正体を見破られたね。どうか暇を下さい」と、男に言った。

「そんなら、お前がそんなに言うなら暇をやろう」と、男は嫁と別れた。

男は蜘蛛が立ち去っていく後を付けて行った。

すると、蜘蛛は穴倉の中に入って行った。

蜘蛛の腹の大きいわけは、 握り飯を放り込んで、

その握り飯を満腹するまで食べたからである。

(出典 佐賀の民話1集 P251)

(出典 佐賀の民話1集 P251)

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