藤津郡太良町嘉瀬ノ坂 荒木誠馬さん(年齢不詳)

 むかし。

あるところのお寺に、ものすごく、けちな和尚さんと利口な小僧さんが住んでおった。

けちな和尚さんは飯は余り炊かせないで、その上、冷や飯ばかり小僧さんに食べさせていた。

そのため小僧さんは、いつも、けちな和尚さんに飯を多く炊かせようと思っていた。

ある日、けちな和尚さんは、

「人ン来た時は、俺が手指ば一本した時は、一升炊け。二本した時は、二升炊け」

と、小僧さんに言った。

ちょうど、その日、檀家から供養の使いがあった。

けちな和尚さんと小僧さんは、供養に行った。

その帰りがけ、けちな和尚さんは糞瓶(たんぼがめ)に落ちてしまった。

その時、けちな和尚さんは両手を上にあげた。

小僧さんは、この時とばかりに、お寺に戻ってから、一斗の米を炊いた。

すると、けちな和尚さんが、

「お前は、なし【なぜ】一斗も飯ば炊くか?」と小僧さんを叱った。

小僧さんは、

「そいばってん、和尚さん、あんた供養の帰りがけ指ば十本あげたろうが」

と、けちな和尚さんに言った。

けちな和尚さんは、それには何も言うことが出来なかった。

そいばっかい。

(出典 佐賀の民話第二集 P222)

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